環境(Environment) 気候変動への対応
気候変動に対する認識
産業活動が活発になり、二酸化炭素等の温室効果ガスが多く排出され、地球温暖化が進行しています。また、地球温暖化に伴う気候変動によって豪雨、熱波、干ばつ等の気象災害が激甚化、頻発化し、気候変動への対策が重要な課題とされています。2015年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」ことを目標とする「パリ協定」が採択されました。また、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等において示されるように、気候変動の進行は科学的事実です。気候変動の進行は自然環境と社会構造に劇的な変化をもたらし、本投資法人及び本資産運用会社の経営とビジネス全体に重大な影響を与える課題です。
本投資法人及び本資産運用会社では気候変動がもたらすリスクと機会について識別、評価、管理を行い事業のレジリエンスを高めることは、持続可能かつ安定的な収益を長期的に確保するためにも必要不可欠な事項であると認識しています。
TCFD賛同表明及びTCFDコンソーシアムへの参加
本資産運用会社は、気候関連課題に関する情報開示を推進するため、2023年8月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しました。この賛同と同時に、国内賛同企業による組織であるTCFDコンソーシアムにも参加しました。
本資産運用会社では、TCFD提言が推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つのフレームワークに沿って気候関連のリスクと機会を評価し、適切な対策を講じるとともに積極的な情報開示を推進してまいります。
(注)2024年からIFRS財団の国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が、TCFDから引き継いで、企業の気候関連情報開示の状況把握を行うことになっています。
ガバナンス
本投資法人及び本資産運用会社に関連する気候関連のリスクと機会に対応するために、気候関連課題に対するガバナンス体制を下記の通りに定めます。
サステナビリティ推進体制規程に基づく定例会議において議論された事項は、最高責任者又は取締役会が決定します。
最高責任者 | 代表取締役社長 |
---|---|
執行責任者 | レジデンシャルリート運用本部長 |
検討事項 | 指標と目標の設定等の気候変動対応に関する事項 |
報告頻度 | サステナビリティ推進体制規程に基づく定例会議において年に1度以上報告 |
詳細については、「こちら(サステナビリティの方針・推進体制)」をご参照ください。
戦略
分析の範囲
今回行ったシナリオ分析においては、本投資法人のポートフォリオを対象としました。
なお、物件の売買により対象が変動するため、分析結果が変わることがあります。
参照した外部シナリオ
本資産運用会社は、国際エネルギー機関(IEA)・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等の国際機関が作成したシナリオに沿ってリスク分析を行いました。
参照したシナリオは以下のとおりです。
シナリオ | 移行リスク | 物理的リスク |
---|---|---|
4℃シナリオ | IEA STEPS | IPCC RCP8.5 |
1.5℃シナリオ | IEA NZE2050 | IPCC RCP2.6 |
各シナリオにおいて想定される世界像
1.5℃シナリオ
パリ協定目標の達成に向け、脱炭素のための社会政策、排出規制や技術投資等の取組みが進展し、温室効果ガス排出量が削減されることにより、気温上昇と災害の激甚化・頻発化は相対的に緩やかになる一方、厳しい規制及び税制等が導入されることにより移行リスクは高まるシナリオです。
4℃シナリオ
十分な気候変動緩和対策が実現せず、温室効果ガス排出が増大し続け、自然災害が激甚化・頻発化する等、物理的リスクが高くなる一方、法規制は現行の制度から大きな変化はない為、移行リスクは比較的小さいシナリオです。
リスク及び機会の特定
本資産運用会社は、前述のシナリオ分析を踏まえて気候関連のリスクと機会の特定及びそれらの財務的影響を評価し、各リスクと機会に対し今後の対応策を検討しました。
分類 | 要因 | 本投資法人への財務的な影響 | リスクへの対応策 機会への取組み |
4℃シナリオ | 1.5℃シナリオ | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
中期 | 長期 | 中期 | 長期 | |||||
財務的影響 | 財務的影響 | |||||||
移行リスク | 政策と法 | 炭素税の導入によるGHG排出に対する課税強化 | 物件のGHG排出量に応じた税負担の増加 炭素税の引上げによる電力価格の上昇 |
|
小 | 小 | 中 | 中 |
保有物件における省エネ基準の強化 | 省エネ化に伴う改修コストの増加 | 小 | 小 | 中 | 大 | |||
技術 | 再エネ・省エネ技術の進化・普及 | 新技術導入に係るコストの増加 |
|
小 | 小 | 中 | 大 | |
市場 | 環境性能による資産価値の変動 | 環境性能が低い物件の価格低下 |
|
小 | 小 | 中 | 中 | |
気候変動への対応状況により投資家・金融機関の評価が変化 | 低評価による資金調達コストの増加 |
|
小 | 小 | 中 | 中 | ||
環境性能のレベルによりテナント・入居者の需要が変化 | 環境性能/レジリエンスが低い物件の収益性低下(座礁資産化) |
|
小 | 小 | 中 | 中 | ||
エネルギー価格上昇による運用コストの変動 | エネルギー価格の高騰によるランニングコストの増加 エネルギーミックスの変化による電力コストの増加 保有物件の省エネ化に伴う運用コストの増加 |
|
小 | 小 | 中 | 中 | ||
評判 | 気候変動への対応の遅れによる金融資本市場におけるブランド価値の低下 | 投資口価格の下落 ESG格付評価の低下 |
|
小 | 小 | 中 | 中 | |
物理的リスク | 急性 | 風水害の激甚化 | 修繕費・保険料の増加 復旧期間における賃料収入の減少 |
|
中 | 中 | 小 | 小 |
慢性 | 平均気温/海面上昇による損害増加 | 浸水防止、損壊等に備える改修費の増加 空調の運転・メンテナンス・修繕費の増加 |
中 | 中 | 小 | 小 | ||
機会 | 資源の効率 | 環境性能の高い物件の競争力向上 | 環境性能に優れた物件の賃料収入の増加 エネルギー効率改善に伴う光熱費の抑制 |
|
小 | 小 | 中 | 中 |
製品・ サービス |
低排出な設備・サービスの提供によるテナント・入居者・利用者への訴求 | テナント・入居者誘致による収入増 |
|
小 | 小 | 小 | 中 | |
市場 | 防災性の高い物件の選好 | 賃料引き上げ、獲得・確保改善により収入増加 |
|
中 | 中 | 小 | 中 | |
気候変動への対応に資する取組みを通じた新規投資家層の開拓 | サステナブルな資金調達(グリーンボンドなど)の活用 環境問題を重視する投資家への対応・訴求による資金調達量の増加、調達コストの低下 |
|
小 | 小 | 中 | 大 |
リスク管理
本資産運用会社が気候変動関連のリスクを管理するプロセスは以下のとおりです。
リスクと機会の識別・評価プロセス
リスクと機会の管理プロセス
指標と目標
本投資法人はリスクと機会を管理、モニタリングするために重要な指標(KPI)と目標を設定しています。
詳細は「こちら(環境パフォーマンス目標・実績)」をご参照ください。